久しぶりにNNNドキュメント’10で放送された「~泣いちゃおれん 全盲の娘 おりえがくれた28年~」を見ました。
この中で全盲の森本おりえさんの母親が言った言葉。
「変えられんもんは受け入れるしかないやん」
このお母さんは、生きていく中でこのようなことに気づきました。
これは、仏教で悟った人が気づいたことと全く同じです。
現実を受け入れないこと。これは苦しみを生み出してしまうと以前、話しました。
もし、全盲の我が子を産んだことを受け入れないと、母親はずっと苦しみ続けるしかありません。
ですが、いくら苦しんでも現実は変わりませんし、今を生き抜くことがさらに困難となります。
ですが、母は変えられないから受け入れて前に進もうと悟ったんです。
これは、誰であっても同じです。
苦しいこと、つらいこと。このようなことが起きます。
その時、現実を受け入れずに恐れてしまうと、この苦しみがずっと続きます。
現実を受け入れた時、はじめて苦しみは終わります。現実が変わるわけではないですが、未来を変えるために行動する準備は整います。
現実を変えるには、まずは現状を受け入れるしかありません。でも、現実を受け入れてもさらに困難は続きます。
目が見えないが普通の生活を送るために、まずは身の回りのことができなくてはいけません。
そして、生きるためには社会性を身につけないといけません。盲学校では、おりえさんは同級生がいなくて1人でした。
交流学習で普通の小学校に週に2日通えますが、それだと社会性が身に付かないとおりえさんの両親は考えたし、おりえさん自身も友達をいっぱい作りたいという思いがあり、普通学校へ通えるように校長先生に直談判をしました。
ですが、結局、普通学校に転入できず小学校の卒業式に参加せず自宅で母親と過ごしました。
しかし、中学校から普通学校に転入できることが教育委員会により認められました。
素晴らしい決断だと思います。
学校側は、おりえさんが普通校に通うことで、何かトラブルが起きてしまうことを恐れて認めませんでしたが、その考えを改めたんです。
おりえさんはその後大学院まで行き福祉学科の修士まで取り、就職しました。当時、特別支援学校で2日、支援センターで2日働いていました(臨時)。
親にとって子供を一人前に育ていることが最大の役割です。
ですが、もし子供が全盲であったら一人前に育てることは、並大抵のことではありません。本人の努力、親やまわりの支えなくしては、無理です。
この番組が放送された時点で、おりえさんは28歳。そして、頑張って働いていた父親はガンで他界。
おりえさんとお母さんは、2人で一緒に暮らしています(おりえさんは3人きょうだいの長女、弟と妹がいる)。
最終的には、やはりおりえさんが1人で生きていけるようになるのが母親とおりえさんの目標です。
そのためには、安定した仕事をして稼げることが大事なんです。
すると、最初に普通学校に転入できるようになることが、確かに必要だったのだということがわかります。
国やお役所の方には、この部分をよく理解して欲しいなと感じます。
全盲だから、何もできないから国が面倒をみればいいというのではなく、全盲の人が生きがいを持って生きていけるようにサポートをして欲しいと思います。
そのサポートの仕方は全盲の人によって違うはずですが、ひとりひとりに寄り添ったきめ細かい支援が大事ではないでしょうか。
おりえさんの母親は、「おりえの母親になったことを誇りに思います」と語っていました。
多くの偏見に合ったり苦労もしましたが、それを乗り越えてきたからこそ言える言葉です。
私は全盲の親子の生き様をテレビを通して少しだけ垣間見ただけですが、いろいろなことを気付かされまし、感動しました。